地域医療とは何か、一言で言い表わすことは不可能です。それは地域医療に求められるものが地域ごとに異なってくるものだからと考えられます。私たち病院はこれまで病気というものをキーワードに地域医療を組み立ててきました。一つの病名が決まればそれに対する治療は自ずと決まって後はベルトコンベアー式に流れていきます。ですから病院では診断名をつけることが一番重要なことになります。必然的に検査も多くなりますし人をみることよりも病気を見ることに熱心になります。病気というものをキーワードにする以上やむを得ない流れがあったものと考えられます。
しかし医療というのはもともと病気のためにあったのではありません。人々のためにあったものです。ですから病気というキーワードの上に人というキーワードがあったはずです。医学の進歩と共に医療が細分化して上と下が逆転してしまったとしても、医学が進歩するためにやむを得ないということになってしまったのかもしれません。今日の医療に見出される様々な問題点は病気というキーワードと人というキーワードが逆転してしまったために起こっています。
私たちはもう一度地域医療というものを見直す必要があります。地域や個人のニーズに応えうる地域医療のキーワードって何なのでしょう。