考察

ここまでの資料から言えることは、青森県では病院や老人ホームなどの施設が多いということである。また有床診療所が多く介護を施設に依存する傾向が強い。これは県民性なのか、経済的事情からやむを得ないのか、行政の誘導であるのか不明である。しかし自分自身の経験から見ても施設を建てる際に、誘致するのには一生懸命であるがそれをどのように運営していくかということは現場任せの傾向が強いように思われる。施設を誘致したり、建てたりすることが行政側の業績となり、それによって何をするのかという大切なことが忘れられてきたのではないかと思われる。施設はあるが医者がいないという現状はその表われではないだろうか。

しかし一方で医者不足は看護婦や准看護婦などによって支えられている。保健婦の数も多い。先日聞いた話では、青森県は医者のする仕事が少ない、同じ50人の患者を診るのであれば圧倒的に青森県の方が楽だということであった。これは医師の不足を看護婦で補っているということである。確かに医者のする仕事は雑用が多いので看護婦がしても問題の無いことは多い。しかし病院のリスクマネージメントを考えればその状態を長く続けるべきでは無いと思われる。これまで医者は優遇され、手厚く保護されてきたのであるが、今後は、医者自身がきちんと責任を取れる体制を考えていかなければならない。そのためにも看護婦に依存している現在の医療体制は早期に是正される必要がある。

このような医療体制で県民の健康と生命が守れているかといえば、死亡率などが示す通り県民の健康状態は全国でも最低クラスである。これは医者の数が増えただけでは解決しないかもしれない。県民の健康意識や食生活、経済状態などが関与しているからである。実際、関東など医師数が青森県よりも少ないところでも死亡率はより低い。また医師数の多い県でも死亡率が低いとは限らない。(徳島や高知でも死亡率がそれほど低いわけでは無い)しかし医者の数と死亡率はある程度の相関関係が認められるようである。県民の健康レベルを上げるためには優先的に考えられなければならない問題である。

以上、施設は多く医者は少ないという現状であるが、だから施設を減らすべきだという乱暴な議論はすべきでは無いと思う。これまでの投資を無駄にすることになるし、将来の県民の財産となる方法を考えるべきである。今ある資源は有効に活用した方が良い。少なくとも行政には施設があれば事足りるという考えを捨てて、どのように運用すべきか真剣に検討してもらいたい。決して現場任せにせずに本当に役に立つ施設となるよう話し合っていくべきである。各地域で必要とされる医療体制に関する議論がなされれば現在県で進めている自治体病院再編成指針も有効に機能していくのではないかと思われる。今後の効率的な施設運用を考えれば機能分担は是非とも必要である。

一方で医師数の増加は医療費の増加につながるのは明白である。現在、医療費の削減にやっきとなっている状況を見れば好ましい状態でないのかもしれない。しかし削減するのは非効率的な医療体制の無駄であって、国民の健康ではないはずである。青森県民の健康を守るための効率的なシステムを早急に考える必要がある。

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